狸仙近現代史  改訂版

第二話 堀川勢力の淵源と根底 

5 山地シュメルのその後

山地シュメルすなわちツラン族は、シルクロードを通ってユーラシアの高原部を東漸し、中華大陸北東部の農作地帯に侵入し、農作民を支配下に置いて、幾つかの帝国を建てました。中華史上の所謂五胡はその代表で、ふだんは遊牧に従事していますが、本来軍事と政治を職能とする民族ですから、武力侵入した土地に統治機構を作って土着農民を支配するのは本能です。

その辺りを日本人に教えたのが江上波雄の騎馬民族説ですが、騎馬民族が日本に来襲したという征服王朝説は、江上の没後後輩の考古学者や歴史学者によって袋叩きに遭っています。理由は、「日本征服の事跡が中国・朝鮮の史書に眼に見える形で記述されていない」、との理由であります。

しかしながら狸仙は、多数の軍船に大勢の兵士を擁し、華々しい戦闘で原住民を蹴散らした軍事的征服の形跡はなくとも、ウィットフォーゲルのいわゆる浸透王朝と思われる史実を幾つか眼に留めています。尤も学者輩がそれをどう説明しているのか、不勉強で知りません。