狸仙経済夜話 

第一話 アメリカが試用した土地本位制の崩壊

3・ワンワールドとは何ぞ

「ワンワールド」の語は、数年前に狸仙が勝手に使い始めたものです。日本人が一般に「フリーメーソン」と呼ぶ誤りを指摘した際、「それじゃ何と呼ぶのか?」との反問に応えるために、用い始めました。当節は日本でも知識人はもはや「フリーメーソン」と呼ばず、外国人が「ワンワールド・バンカー」と呼ぶものを「国際金融資本」と訳しています。

だがこれは金融界にだけ焦点を当てたもので、狸仙はそれを、宗教を中核として傘下に軍事・金融部門を置く世界的秘密勢力と考えていますから、敢えて「バンカー」の部分を外したわけです。狸仙によれば、「ワンワールド」の傘下に「宗教ワンワールド」「軍事ワンワールド」「金融ワンワールド」(ワンワールド・バンカー)があります。ワンワールド・バンカーを以前は「ユダヤ」とか「ジュイッシュ」とも呼ばれていましたが、これも誤った用法で、外見的には確かに近似概念ではあるが、特定の民族・宗教・団体に直接関係させてしまうと説明が付かず、訳が分からなくなってしまいます。

狸仙は本町小学校6年生の時、中谷秀之進校長の特別講義で、この世界には「フリーメーソン」と謂う秘密結社が存在することを教わりました。ずっと昔のこと、今は故人になったハーフの親友が、「オランダ人はユダヤだ」と言うので、驚いて問い返すと「そんなこと外人は皆知っとるが、口にせんだけだよ」とのことでした。後日、彼の言うユダヤとはヴェネチア・ワンワールドで、社会公然の秘密であることを知りました。

アチラでは、学校では正式に教えていないのに、社会全員が知っています。しかし日本の学校教育者や学界人は、今も全員がその存在を認めず、所論を問われると「ワンワールドか何か知らないが・・・」といった口吻で論点そのものを否定し、さらに追究されると「陰謀史観ですかぁ、ボクはどうも嫌いでね・・・えへへ」などと、理由にもならぬことを言って逃げを打ちます。学界人がごまかす理由は、教科書のどこにも書いておらず学校で教わっていないからで、彼らにとっては学校が鶏小屋、教科書が餌箱の養鶏場社会が宇宙のすべてなのです。学校教員の無知のせいで国民全員がコスモポリタンの存在を知らない日本は、歴史知識が平準化する世界の中で、独りだけ別の方向に向かっています。

世界の学校教育がコスモポリタンの存在を隠蔽するのは、学校教育制度そのものがコスモポリタンの管理下にあるからで、これはマス・メディアも同様であります。マス・メディアはずっと、その隠蔽作戦に協力してきましたが、近年インターネットの普及により一大情報革命が迫りつつあります。隠蔽はもう保ちません。

発生学的にいうと、ヴェネツイア・コスモポリタンの淵源は、メソポタミアの干潟で最古の文明を創ったシュメール人の1種族で、本来が海洋民族であります。その後の歴史を掻い摘んで申しますと、レバノン地方に移ってトロイを建国し、北アフリカに移ってカルタゴを建て、イタリア半島のヴェネツィアに永く本拠を定めました。何れの地に在っても生業は交易で、権力の支配領域(国家)の境を越えて活動を専らとしたことから、欧米の知識人は「ヴェネツイア・コスモポリタン」と呼んでいます。すなわち「ヴェネツイアを根拠とする世界市民」と謂った意味で、自ら名乗らない彼らにとって、これが最も正統的な呼称だと思います。

コスモポリタンの本流は、ヴェネツィアからからオランダへ、さらにロンドンへと拡散し、オランダから新大陸へ渡ってニュー・アムステルダム、乃ち今日のニュー・ヨークに定着しました。この歴史の中で、多くのユダヤ教徒が早くから配下として入り込みましたが、ユダヤ人・ユダヤ教徒なるものの本性は、ここは一先ず措き、一神教の起源と併せて別に詳述することとします。

イベリア半島に入りスペインに定着したユダヤ教徒は、その地で回教徒と仲良く混住していましたが、カトリックによる軍事的失地回復(レコンキスタ)に成功したフィリッペU世から、カトリックへの改宗を強制されます。命令を拒んだユダヤ教徒たちは、隣国ポルトガルとスペイン領だったオランダに追われ、或いはオスマン・トルコ統治下のアフリカに逃れます。その後、移住先の各地で、農漁者や商工人ら実業民族がユダヤ教徒を迫害しますが、迫害の対象はヴェネツィア・コスモポリタンの下層に転入したユダヤ教徒と思われます。

自ら名乗らず、素性も明らかにしなかったヴェネツィア・コスモポリタンは、やがて傘下に潜入した多数のユダヤ人と混淆されて、「ユダヤ」「ジュイッシュ」の俗名を冠せられました。自らそれを排除しようと努力した形跡がないのが不思議ですが、これは、狸仙の浅学によるのかもしれません。シェークスピアの芝居「ベニスの商人」の敵役シャイロックは、正にヴェネツィア・コスモポリタンに潜入したユダヤ教徒ですが、彼らは既にヴェネツィア・コスモポリタンの一部となっていました。つまり、当時のヴェネツィア・コスモポリタンは、大半がセファルデイと呼ばれるユダヤ教徒に置き換わっていたようです。セファラデイは1つの民族種と解されていましたが、近年これに異論が建てられました。一神教の淵源に関わるものですから、別稿に述べます。

そもそもコスモポリタンとは無国籍思想のことであって、この思想を共有する以上、特定の族種や宗教に拘る必要はなかったのでしょう。ヴェネツィア・コスモポリタンが、族種的にせよ宗教的にせよ、全員がユダヤ人・ユダヤ教徒に入れ替わったのではなく、現にイタリアで「黒い貴族」といわれるローマ法王支持勢力は、当然ながらユダヤ教徒ではありません。ヴェネツイア・コスモポリタンの中核は、スペインを追い出されたセファラデイのカソリック転宗者と言われていますが、真相はどうか。

狸仙の仄聞では、ワンワールドには現在3種があり、@は国際金融連合(ワンワールド・バンカー)、Aは世界王室連合、BはWASPの白人至上主義者だそうです。ワンワールド・バンカーの頭領の中では、モルガンがヴェネツイアで、ロスチャイルドがユダヤと聞きました。彼らと宗教の関係は本当のところが分からないのですが、そのあたりを含めて、全体像を全く明らかにしないため、秘密結社とか秘密勢力と呼ばれてきたのです。

要するに、ヴェネツィア・コスモポリタンとは、国家観念に馴染まず国籍観念がなく、遠隔地交易を本領とした商人の集団で、物資交易により蓄積した富で港湾国家を築造し、これを本拠として全世界に同様な拠点を作り、ネットワークを構築しました。オランダをスペインから独立させた彼らは、オランダ東インド会社を設立し、インドのゴアを拠点として本格的に東方貿易に乗り出します。彼らの一派でバスク人のイグナチウス・ロヨラら7人の修道士は、1534年にジェスイット教会(イエズス会・耶蘇会)を創立して、カトリックの本拠ヴァチカンに潜入しました。

宗教ワンワールドの発祥はコスモポリタンの誕生と共に古く、耶蘇会に始まった訳ではありませんが、耶蘇会の強力な行動力は世界史の位相(Phase)を変異させるに十分な力を発揮しました。中華大陸に向かったポルトガルの海軍は、大明帝国の海禁政策に乗じて日明間の仲介貿易に乗り出し、大明皇帝からマカオの割譲を受け、ここを本拠として日本社会のカトリック化を実行し始めました。

以上を省察すると、ヴェネツィア・コスモポリタンは、トロイア以来古代ギリシャ・古代ローマ・近世スペインらの軍事国家と軋轢を生じ、何度も本拠を破壊されて滅亡に瀕しています。軍事国家に直接対抗するには、軍事力ことに陸軍力が必要で、それには領土と人民を持たねばならないが、これは不経済で、自らの肉体的危険をも招来します。ローマと戦ったポエニ戦役がその好例で、数世紀に及ぶ大戦争の結果、ローマに敗れたカルタゴは徹底的に破壊されて皆殺しに遭いました。ローマとの争点となった貿易拠点シシリア島は、最終的にはローマに奪われましたが、そこに残ったカルタゴ族がシシリアンとなり、十数世紀を経て秘密結社マフィアとなってアメリカに渡り、ローマの末裔が営むアメリカ社会に潜入して祖先の仇を討った・・・・・狸仙は馬野周二博士からそのように教わりました。

ともかく、カルタゴの滅亡以来、彼らは体力・武力よりも脳力・財力に重きを置くようになり、中世都市の一寓に住んで貿易と商業・金融に従事し、国民国家が誕生してもそれに寄生して自らの国を造らず、従って固有の陸軍を持たず、その費用と手間を子弟の教育に回しました。彼らが子弟に教えたのは、人間社会の真相とそれに対処する効率的な方法です。一言でいえば謀略と蓄財の方法で、蓄財に関して言えば、やがて交易よりも一段と効率的な金融事業に特化した一派が、信用創造を制度化して信用通貨制度を発明しました。

信用創造とは、「預けた者の全員が同時に返還を求めに来ることはない」という経験則に基づき、預り証を過剰に発行することですが、それが金地金の預かり証であれば通貨として流通するから、他人に貸して金利が取れる。この現象に気付いた金細工人が銀行に転向しましたが、日本でも同じことが同じ時期に始まり、刀の鍔や目貫を加工していた金細工人の後藤家が「金座」になりました。金地金に限らず、武家贈答品の鰹節でも似たことは可能で、ニンベンの鰹節切手が貨幣のごとく流通しました。一時流行したテレホン・カードも、そんな要素がありました。

ともかく信用創造が金融ワンワールド成立の所以で、これにより彼らは一般人民とは一線を画し通貨発行権を独占する「通貨貴族」に成りました。眠っていても儲かるから貴族なのですが、一般企業家に貸して回収に煩うよりは、国に貸した方がずっと簡明です。そこで一般金融は傘下の市中銀行に任せて、金融ワンワールドの大元は、折から成立した近代的国民国家に対する国債金融を本領とします。

この仕組を簡単に謂うと、「ヴェネツィア・コスモポリタンが私有する各国中央銀行が、紙幣を発行して政府から国債を買う。紙幣を手にした政府は、戦争や行政など政府運営の諸費用をそれで賄う。紙幣には利子が付かないが国債には付くから、その利子が中央銀行の儲けになる。紙幣の裏付けは預かった金塊で、それに金利を払ったとしても、信用創造によって何倍にも膨らました膨脹分の利子はヴェネツィア・コスモポリタンが丸儲けする」といったシステムで、そのためにアメリカの連邦準備制度が創られました。

ただし、この制度は金利の存在を必要条件にしています。つまり国債金利がゼロの世の中では、信用創造をしても利子による利益が得られなくなり、逆に紙幣の印刷費だけ損をしますから、彼らにとって中央銀行の意義がなくなるわけです。連邦準備銀行(FRB)は、米国債を買うことで得る「眠り口銭」を、最近は連邦政府に返還していていますが、ともかくゼロ金利により、中央銀行制度の意義が数世紀ぶりで変化したわけで、通貨貴族の特権的地位も消滅する筈です。

因みに戦後、覇権国から脱落した日本や経済的地位の下落した欧州諸国では、平和主義なるものが至上善として喧伝されるようになりました。早く謂えば俚諺にいう「金持ちケンカせず」の教えですから、その淵源がワンワールド・バンカーに在ることは確かで、この思想を唱える者は本質的に一種の謀略家なのです。

謀略の基本の一つは人間の宗教心を利用することで、信者は諸費自弁の手弁当で流汗流血を惜しみませんから、うまくいけばこれほど効率的なものはなく、そのために最も都合の良いのが一神教です。ところが、自然科学が発達すると、教理と科学との矛盾により信徒の宗教心が薄れ、宗教的建前と人間的本音とが乖離し始めます。要するに、原始神と人間との間の感覚的距離が遠くなるので、これに対処するために唯一神と人間の仲介役が必要になります。そこで、ユダヤ教の中から預言者キリストを半神と看做したキリスト教が生まれてローマ社会に拡大し、アラブ世界では預言者モハメッドが言行一致を説く回教を立教しました。それでもなお影響力を失っていく宗教を補うものとして、近代社会に登場したのが「メディア」すなわち報道・言論であります。メデイアの拠点は、一見報道機関にありそうに見えますが、実は学校教育制度に潜んでいて、ハードとしての学校施設、ソフトとしての教科書がメディアの基盤を成しているように思えます。

最後に、軍事ワンワールドについて、一言いたします。海外貿易に従事して水軍の必要を悟ったヴェネツィア・コスモポリタンは、いつの間にか世界の海軍を間接管理下に置きました。海軍将校の多くはどの国でもフリーメーソンリーで、戦前のわが海軍も例外ではなく、つまり海軍そのものにコスモポリタン性があります。これに対して陸軍は土着性が濃く、民族性に固執していました。ところが、近来軍事超大国の国軍の中に(と謂うか外か上に)、彼らの軍事部門が成立したことを狸仙は知らされました。各国軍が自ら変移してワンワールド軍に変わったのか、それともワンワールド隷下の特殊部隊が各国軍に潜入したのか、そこまでは判りません。

狸仙が仄聞するところは以下の通りです。

米軍が1968年(昭和43年)に作成したが先送りされてきたHAARP計画が予算不足に陥った。(HAARPとは何か、インターネットで検索して下さい)。1980年の米議会は、カーター大統領の下でHAARP計画の基礎費用として2千5百万ドルを可決し、予算の実行成果を約束する。見返りは、マンハッタンサイズの基地を北極圏に作って電磁波の備蓄場とし全米エネルギー需要のコスト・ゼロを達成することであった。同年、米軍と科学者は、カーターと交代したレーガン大統領に、冷戦構造を解消させる手柄を見返りにして日本のカネを収奪する作戦に着手します。それが80年9月の「プラザ合意」で、中曽根内閣が受け入れた。

軍事ワンワールドの成立は、レーガン大統領が1983年に主唱したが、今は覚えている人も少ない「スター・ウオーズ計画」(戦略防衛構想)と深い関係があるようで、それを示唆した映画が1988年頃に公開されています。タイトルは「ハープ」とか謂うものでした。その後のソ連崩壊など一連の歴史的現象の裏には、軍事ワンワールド成立の秘事が潜むものと狸仙は推察しています。

スターウォーズ計画の真の内容を知ったソ連が、自ら体制を崩壊させたので、冷戦解消の名誉はレーガンに帰せられました。気象兵器などの超新兵器の開発・実験は超大国の軍隊でなければ到底無理ですが、それにつけても予算が問題で、その資金源としてレーガン大統領が中曽根首相・竹下蔵相に、「85年のプラザ合意」を強制したのです。

そして昭和62(1987)年6月には国内初の株式先物である「日経50」の取引を開始し、翌年9月には「日経225先物」の取引を開始しました。折から昭和大帝のご危篤が続く中を、日本の生保はじめ金融機関の日経先物買いにより東証バブルが現出し、これに向かってカラ売りを仕掛けた外資が、バブル崩壊を機に数十兆円を海外に持ち出します。これが米政府予算外の超新兵器開発費用に充てられと聞き及びますが、もしこれが事実なら、日本国民の預金が軍事ワンワールドを支えたことになります。

以上を以てヴェネツィア・コスモポリタンについての一応の解説としますが、諸兄にはそのイメージが湧いたでしょうか。或いは「俗にいうユダヤの陰謀論と、ちっとも変わらぬではないか」と言われるのでしょうか。世界に存在する陰謀勢力の存在を認識すれば、歴史理解は当然、陰謀史観になりますが、俗にいうユダヤ陰謀論とは似て非なる者とご理解いただければ幸甚です。

 平成23年9月16日改訂    

                               狸屋仙兵衛 しるす