贋作指摘に反証
佐伯作品の画布テトロン含まず
武生市 糸質検査の結果発表
2機関 「材質は麻」
   武生市の公開堂佐伯美術館準備委員会は27日、寄贈を受けた洋画家、佐伯祐三(1898〜1928年)
未公開作品の画布の糸質検査結果を公表した。画商集団の東京美術倶楽部から、寄贈絵画の画布に
テトロンを含んでいると指摘されたことに反証しようと実施したもので、検査を依頼した2ヶ所の機関とも
繊維は麻で、テトロンは含んでいない、と断定していることが分かった。
   市が画布の糸質鑑定を依頼したのは、県工業技術センター(小林哲雄所長)と京都市染織試験場
(川口浩所長)の2ヶ所。いずれも高額顕微鏡による側面検査で、画布の糸質は麻であると断定している。
特に同試験場の顕微鏡による写真撮影では、科学繊維ではあり得ない、天然繊維のセルロースを証明
する節、多数の縦の線条がくっきりと写し出されている。
   同センターではまた、硫酸70%による薬品検査を行い、室温で溶解したことから、麻と特定した。
テトロンは、硫酸70%では、室温では溶解しないという。さらに染料による染め分け試験も行い、植物性繊維
であることが示されている。
   結果を受け同日、準備委員会を開催。「東京美術倶楽部が贋(がん)作と断定したとされる理由のうち、
市民に最も疑わしいイメージを与えたテトロンの混入の事実はないことが証明された」(堀江委員会)とし、
近く同倶楽部に鑑定報告書を送付するとともに、再度同倶楽部の鑑定資料の照会を行う方針を確認した。
   さらに今後、選定委、新規に採用する学芸員と、絵の具の調査、資料の筆跡鑑定などについて協議
していくことにした。
   市は、検査を実施するため選定委、市会議員の立会いのもと、寄贈絵画38点のうち、12点の張り代から
画布を切り取り、今月中旬に検査に出していた。




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