吉薗周蔵氏に加筆の事実を告白した佐伯米子夫人直筆の手紙の全文は次の通り。
(旧仮名使い、漢字は適宜修正してあります)
ことづて聞きましたは。他の方にあんなこと頼まれてほんとにあなたは意地悪な方ね。
私がどんなに悲しいかおわかりでしょう。秀丸そのままの絵では誰も買って下さらないので
私が手をいれておりますのよ。秀丸もそれをのぞんでおりましたし。
あなたもそのことをよくご存知でしょう。秀丸そのままの絵に一寸手をくわえるだけの
ことですのよ。こつがありますから私、苦労致しましたがのみこみましたのよ。それは見違
えるほどになりますから。画づらの絵の具や下地が厚いものにはガッシュというものをつか
い画づらをととのへ、また秀丸の絵の具で書き加えますでしょう。
すこしもかわりなく、よくなりますのよ。一度おめにかけますからお出で下さいませ。
○○様に聞いてなどといはないで下さいませ。
それでは私が悲しいです。○○様はうそばかりいわれるのですもの。どうかお信じになら
ないで。
秀丸はほとんど仕上げまで出来なかったのです。あなたはそのことよくご存知でしょう。
○○さんにそんなことまでお話にならないで、それでは私うらみに存じましてよ。もう私を
お許し下さいませ。これ以上きつくなさらないで。私のこと、お見すてにならないで私を
あわれとおぼしめし下さいませ。お許し下さいませ。
今、おめにかかりたくていずれ月のうちにおたずね致します。
さようなら よね子
私のことお許し下さいまし。かえすがえすお願いしましてよ。
この頂いた絵よく見て下さりませ。どんなにかよくなりましたでしょう。あなたのお手元
にあるもの、私が仕上げればすぐに売れる画になりますのよ。すべての絵を手直ししてきち
んと画会をしたいのです。あなたと私とでいたしましょうよ。
私のこと、見守ってくださいませ。かならずはげましてくださいましね。
まずしいまずしいよね子。見守ってくださいませ。
(○○は佐伯の友人)
(Since 2000/06/03)
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